【労務の談話室】第2回 育児休業給付金の受給要件について~完全月の落とし穴~

 

育児休業給付金の受給資格要件で登場する「完全月」という言葉をご存じでしょうか?

 

<育児休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヶ月以上あること>とされておりますが(厚生労働省HPより)、意外とこの「完全月」を読み落としている方が多いのです。

今回はこの「完全月」の観点から育児休業給付金の受給資格について解説します。

 

 

 

「完全月」とは<育児休業開始日前日から1ヶ月ごとに区切った期間>のことです。

受給要件の賃金支払基礎日数は暦日単位ではなく、完全月単位で11日以上あることが絶対条件となります。

完全月を満たせず受給資格無しとなったケースを見てみましょう。

 

育児休業開始前日である9/14から1ヶ月ごとに区切った期間が「完全月」となりますので、この区切りの期間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上揃わなくてはなりません。

 

 

上記表の「8/1-8/14」の間に賃金支払日数が11日以上あるので、一見要件を満たしているように思いますが、完全月が不成立(1ヶ月の期間に満たない)のため、要件の算定期間に含めることが出来ません。結果Aさんは<賃金支払日数が11日以上の完全月が12ヶ月未満>と見なされ、育児休業給付金の受給資格は無しとなります。

在籍年数が長い方はこの「完全月」の落とし穴にはまることはほぼありませんが、入職1年弱で育児休業に入る方は注意が必要です。

 

Aさんのように入職まもなく休業に入る方は、前職の被保険者期間を合算するといいでしょう。前職退職後に基本手当の受給決定がされていないことと、退職から再就職までの空白期間が1年以内であることが条件ですが、合算で受給資格を得ることはよくあるケースです。可能性がある方は前職の人事担当者さんに離職票の発行を依頼しましょう。

 

育児休業中のお金の問題は非常にセンシティブです。支給されると思っていた給付金が申請後に「受給資格無し」と発覚すると、休業中の家計に打撃を与えるだけでなく、事業主と従業員間の信頼関係にも影響しかねません。

受給資格の有無は育児休業開始前に必ず確認し、事業主と従業員双方が安心して休業を迎えられるようにしましょう。

(文責 河野)